HUC(フック)はその正式名称を「ひがしかわユニバーサルカード」。
東川町内の100店舗以上、行政施設などを合わせると町内150ヶ所で利用できる、電子マネー機能もついた町内電子ポイントシステムです。
デジタル地域通貨といった方がイメージしやすいかもしれません。
2017年11月にスタートしたHUCは町民の8割が利用し、海外から日本語を学びに来ている留学生や、町にふるさと納税された「株主」に利用されています。

ICカードだけでなく、アプリでも使うことができ、全国ではユーザーが15万人、経済効果は10億円を超え、新型コロナ対策など、いまや東川町のまちづくりには欠かせないエコシステムです。
利用する人々にとっては、町のパスポートのような存在といえるかもしれません。

まさか、このHUCが「あたたかいお金」として、グローバル企業のCFOで感じていた限界の先にある未来につながるとは、想像もつきませんでした。

話は、移住6ヶ月にさかのぼります。
雪だるま100個の冬祭りを終え、ほっとしていた自分に商工会会長から一言「ポイントカードを新しくしたい」。

それまでも商店街にポイントカードはありました。
しかし多くの方は利用していませんでした。
加盟店で「ポイントカード持っていますか?」と聞かれても「めんどうなのでいいです」というありさまでした。

これを、もっとたくさんの人が利用するものに新しくして、商店街を活性化させたいというのが会長の思いでした。

そこで、右も左も分からない手探りながら、補助金を申請し、調査を行ったところ、町の8人に1人しか利用していないことがわかりました。8000人の町で、利用者数は1000人程度。
使えるのは小売店や飲食店など30ヶ所ほど。これでは、活性化はなかなか期待できません。

企画・分析・話し合いを行い「町中どこでも・だれでも使え、買いものだけでなく、町のイベントやボランティアでもポイントが貯まり、さらに自分がお得なだけでなく、少年団への寄付や自然保護など未来のまちづくりにも使えるしくみ」というコンセプトができました。
さらに当時、地方では、まだほとんど使われていなかった、キャッシュレス決済も普及できるのはと考えました。

しかし、移住直後で信用も実績もない自分、実現には新しい技術やお金が必要です。

さらに成功事例もなければ、それを実現するしくみもありません。

最初は、ほとんどまともに取り合ってもらえませんでした。それが1つの言葉で変わります。

その言葉が「現代の木彫看板」だったのです。
東川町は1986年に「写真の町」として、文化を通じたまちづくりをはじめました。
時をほぼ同じくして、商店街では温かみのある彩りをつくろうと、当時の青年部が中心となり、木彫りの看板を作り始めたのです。


「写真によるまちづくり」も「木彫りの看板」も当初は反対意見や、苦労が多かったようですが、未来につながるまちづくりとして続けた結果、30年以上経った今でもまちづくりに役立てられています。

HUCは、単なるお得なポイントカードではなく、デジタル技術を活用して未来のまちづくりを進めるしくみです。
言いかえると、これまで木彫りの看板を通じて、先輩が進めてきた情熱を未来につなげる「現代の木彫看板」です。

こうした共通言語ができたことで、目に見えないながらも商店街のリーダーを中心に、HUCへの想いが高まってきました。

とは言え、まだPayPayもスタートしていなかったタイミングで、さすがにそんな夢物語の実現にはまだ時間がかかるだろうと思っていました。そんな中、町長はじめ、町のリーダーに調査結果をプレゼンを行ったのです。「良いアイデアだけど、現実的ではない。しばらく様子を見るように」と、言われることを想像していました。

しかし、予想に反し、町長がこう言いました「すばらしい取り組みですね。町も全面的に応援します」。
それに続く一言が、町全体を動かしたのです。「今年中に200ヶ所で導入実現を進めてください」
実は、これが『数字で示せ』のお手本です。
書籍の中でも、人を動かす技術「いつ・いくら」のお手本として紹介させていただいております。

町長の一言は、同時に「ミッション・インポッシブル」を、我々の目の前に提示しました。

「今年中に200ヶ所(のちに150ヶ所に変更)」が意味するものは、当時ポイントカードを使ったこともない、自分のビジネスで使うなどとは夢にも思わない町内の事業者も加盟店として参加していただくことです。建設会社や家具会社、鉄工所、金融機関、農協や学習塾まで。しかも今年中に実現するために必要な補助金申請までに参加合意をもらわなければなりません。与えらたタイムリミットはたったの4週間。

「ミッション・インポッシブル」を解決する特効薬はズバリ、ありません。
「ミッション・インポッシブル」をズバッと解決してくれるヒーローもいません。

そこにいたのは、「現代の木彫看板」を実現し、未来にまちづくりをつないでいこうという数人の仲間と、それに共感した町の先輩です。小さなチームで、150ヶ所を実現すべく、会社やお店のリストを作成し、信頼関係のある人が1軒1軒真剣に口説いて回ったのです。

それに加えて、業種や規模にも関わらず使えるような仕組みづくりや、負担にならない料金設定、期間限定の無料キャンペーンなど、マーケティングやビジネスの手法も取り入れながら、結果4週間で「ミッション・インポッシブル」を達成し、経済産業省の補助金と町行政の支援で2017年11月にスタート、利用者も年内に1万人を超えました。

HUCはスタートから、加盟店や利用者が使いたくなるような、アナログとデジタル両面での改良を次々と行っています。

例えば、日本唯一の公立日本語学校で日本語を学ぶ、外国人留学生には奨学支援として8000円分のポイントが毎月提供されます。これを300人で12ヶ月だと約3,000万円の経済活動が町内で行われるわけです。

町民に対しては、体育館やギャラリーの利用でポイントが提供されたり、健康診断や健康増進イベントへの参加でポイントがもらえたりします。商店街の宝くじや、アプリのデイリースクラッチ、さらにはARと連動した木彫看板アーカイブイベントも。
また、観光、家具クラフト、農業といった基幹産業とのコラボでも利用されています。
さらに起業家応援イベントや、移住推進、さらに高齢者見守りボランティア、環境活動に対するポイント提供。
学童の見守りや、少年団活動支援、さらには企業とのポイント連携などさまざまな場面で利用されています。

このHUCの取り組みは、2019年に経済産業大臣より『はばたく商店街30選』の選定を受けました。


さらに北海道経済連合会(道経連)が発表した2050北海道ビジョンのモデルケースとして紹介されたり、北海道大学で「地域のDX革命」として取り上げられたりしてきました。また、北海道だけでなく全国の自治体からも視察や講演依頼が続き、地域通貨の全国成功事例として注目されています。

【2050北海道ビジョン~『課題解決先進地域』のフロントランナーを目指して】

【北海道大学科学技術コミュニケーション ひがしかわユニバーサルカードで実現する地域のDX 革命と多次元のつながり】